2012年5月2日水曜日

ブログテーマ[批評]|環境ジャーナリストの周辺日記


9月分です

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■「日本型近代家族 どこから来てどこへ行くのか」

 千田有紀著

(勁草書房/2730円/税込み)

■「セクシーGメン 麻紀&ミーナ」

 森奈津子著

(徳間書店/1680円/税込み)

 

 標準的な家族とはどういうものか。よく言われる、標準世帯というのは、夫婦と子ども二人の4人暮らしだ。夫婦は恋愛結婚し、夫は仕事で家計を支え、妻は専業主婦、ないしは補助的な仕事に従事。


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 こうした家族を核家族といい、第二次世界大戦後に増加してきたと言われている。にもかかわらず、大家族と同じく家父長制がしかれている。それどころか、いまだに結婚は家どうしで行うものであり、選択的夫婦別姓は、家が崩壊するから反対という人は少なくない。

 もちろん、標準家庭は全世帯のほんの一部でしかなく、子どもを持たない、あるいは結婚しない人は増えている。家制度はとっくに機能しなくなっており、専業主婦は裕福な家庭でしか成り立たなくなっている。そうした現実が、介護保険制度を必要としているということは、言うまでもない。

 フェミニストによる近代史研究は、家父長制も核家族も歴史の中で捏造されてきたものであり、一般的なものではないということを明らかにしてきた。けれども「日本型近代家族」の著者は、それすらもまだ、十分に実体を反映しているわけではなく、理解を深めることで先に行こうとしている。


ファーガスフォールズAA

 本書は、近代家族がどのように成立してきたのかを明らかにする第I部と、「家」「家父長制」「核家族」について論考する第II部に分かれている。

 第I部では、そもそも「家族」が国民国家によってつくられたものだという指摘からはじまる。そして、それを支える、ロマンティックラブや母性といったイデオロギーへと展開していく。核家族どころか、それ以前の大家族というものすら、作られたものだという。それはときには、労働集団であり、生涯未婚率も高かった。このように考えていくと、現在起きている、未婚率や離婚率の上昇も、特別なことではないように見えてくる。ではどうすればいいのか、という問いは、残っていくものなのだが。


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 第II部の論考も刺激的なのだが、ここでは「核家族」について、述べておく。ぼくにとっては、核家族は日本では、戦後に一般化したというイメージだ。けれども、そこには封建的な家制度からの解放という意味もあったというのは、意外な指摘だった(といっても、このことは実は、ぼくの勉強不足で、社会学では一般的なことらしいのだけど)。そうであれば、家制度はとっくに壊れているし、そうであるにもかかわらず、家制度は核家族に回収されていくわけだが。

 


 森奈津子は、バイセクシャルな女性向けのエロ小説で、フェミニストの間で評価が高い。その新作は、厚生労働省少子化対策局所属のセクシーGメンの活躍を描いたものだ。時代は21世紀後半、少子化対策のため、結婚したカップルは手厚く保護されるが、それゆえ、子どもをつくらないカップルは、Gメンが摘発することになる。セックスレスカップル、オナニスト、SM愛好者が標的となり、Gメンによって拉致され、セックスの快感に目覚めさせられる。

 ここでは、性の多様性を認めつつも、生殖に関しては国家の関与が大きくなった世界が描かれる。子どもさえ産んでくれれば、育てることは国が引き取ってもいい。

 国家の手先によるセックスの調教という設定そのものに、違和感を感じるが、それこそが私たちが引き受けている現実につながる。

 


 千田が家族論を書いている一方で、すでにその家族は崩壊している。けれども、家族が個人を抑圧するしくみであれば、崩れてもかまわない。個人や関係の多様性が尊重される社会であるべきだと思う。それでも、国家は少子化対策と高齢化福祉に関与することになる。そのことを、特に前者について、森のエロ小説は踏み込んでいったのだと思う。



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